書き手の魔法
数年前のこと。LEDの普及に、
私も部屋の照明を見直そうと、
参考のために一冊の本を手に取りました。
『照明で暮らしが変わる あかりの魔法』
(村角千亜希・著/エスクナレッジ・版)
家庭内における理想的な照明のあり方を
写真やイラストを多用して紹介する内容。
読んだ感想はと言うと
「とっても素敵な本!」でした。
実用書でありながら写真集のようで、
読み物としても十分楽しめる。
しかし私がいちばん衝撃的だったのは、
肝心のLEDについて
一切ふれていなかったことです。
もちろん古い本ではありません。
2015年春に出版されたもの。
にもかかわらず、
著者がおすすめするのは白熱電球。
エジソンの偉大な発明品ではあるけど、
今となっては、
環境に負荷をかけるだけの代物で、
もう姿を消し始めているというのに・・・
と、ますます不思議に思うのですが、
著者はそのこと自体にも言及していません。
白熱電球は蝋燭が燃えるのと
同じ仕組みで光っていて、
それが安らぎをもたらすから
理想的な照明なのだ——
と書かれているだけでした。
しかし、この執筆方法は
私にある気づきをもたらしてくれたのです。
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それは、
〝ネガティブな意見をあえて述べる必要はないのだ〟
ということ。
おそらく著者は、
LEDを好ましく思っていないのだと思います。
かといって著書のなかでそれを鮮明にすれば、
多くの読者の反感を買う。
そこで
白熱電球の利点を伝えるだけにした。
そうすれば読者の気分を害することなく、
自分の意見を伝えられる。
これは当時、ネット上で
積極的に批判を展開していた私には、
目から鱗でした。
それ以来、
否定的なことを主張するのは、
ほどほどにするようになった、
という次第なのです。