terra〜物語のガードナー

物語を紡ぎ出すことに人生を費やしているインディーズ作家・多部良蘭沙が、日常で感じたことを綴るブログです。どうぞ、よろしく!

漂流者は宝箱をも掴む

 

 

私は子供の頃は大のアニメファン。

成長してからもその気持ちは変わらず。

 

まったく絵が描けないのに、

ついにはアニメの専門学校に通い出す始末でした。

 

課程は2年間で半年で卒業制作。

個人で短編フィルムを作るのです。

 

何を作ろうかと考えた私ですが、

とっかかりになるものがありません。

 

それで東映動画(現東映アニメーション)が

当時、研修生募集の試験に出していた

絵コンテ課題を借りることにしました。

 

無人島に漂着した男が

ぼうっと海を眺めていると、

宝箱が流されてきます——

 

冒頭はこれだけ。

で、ここから先の展開を

各々が考えるというものです。

 

それで私は男が宝箱を取り、

そのなかを開けるとあるハプニングが起こる、

という展開を考えました。

 

そして、それを先生に話すと、

 

「どうしてその主人公は

 そんなものに興味を持つの?

 宝箱に入っているのは宝物に決まっている。

 そんなものは漂流生活では役に立たないから、

 取ろうとはしないと思うよ」

 

と言われたのです。

 

私は、

頭のなかが下の画像のようになってしまいました。

 

[http://Embed from Getty Images :title]

 

漂流生活だからこそ、

それが何であれ必要とするのでは?

 

そもそも宝箱だからといって、

なかに宝物が入っているとは限りません。

 

だれかが中身を取って、

別のものに入れ替えているかもしれない。

 

それが漂流生活で役に立つかどうかは、

開けてみなければわかりません。

 

仮に金銀財宝が入っていたとしても、

無人島を脱出した後、

持ち帰れることができれば役に立ちます。

 

もちろん中身が空っぽのケースもあるでしょう。

でもその場合でも、

箱そのものは役に立つかもしれません。

 

食料を鳥や動物に奪われないように保存したり、

あるいは椅子として役立たせることができるかもしれない。

 

 

ふつう漂流者は、

〝溺れる者は藁をも掴む〟

状態になっています。

 

だから流れてきたものには、

ぜったいに手を伸ばすのです。

 

もちろん嵐で海が荒れているとか、

鮫がうようよしているなど危険なとき以外は——

 

 

以上のような理由から、

先生の指摘は一見鋭いようですが、

じつは発想が貧しいのではないかと思いました。

 

私は、この先生がもし無人島に漂着したら、

流れてきたものが何であっても、

絶対に手を伸ばすと断言します。

 

それにはかなりの自信があります。

 

[http://Embed from Getty Images :title]