terra〜物語のガードナー

物語を紡ぎ出すことに人生を費やしているインディーズ作家・多部良蘭沙が、日常で感じたことを綴るブログです。どうぞ、よろしく!

犯罪者がもっとも恐れるものは?

 

 

とつぜんですが、

ジョニー・デップ主演の

『ニック・オブ・タイム』という作品を

ご存知でしょうか。

 

遠方から街に来た会計士が、

とつぜん見知らぬ男女に幼い娘を人質に取られ、

知事候補を暗殺しろと命じられるサスペンス映画です。

 

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90分間に起こった出来事を同じランタイムで描き、

主人公が陥った窮地が臨場感を持って伝わってくる作品で、

私はけっこう楽しんで観ました!

 

ところが、ずいぶんあとになって——

というか、ほとんど最近なのですが、

思いがけないことを知ったのです。

 

それは、

「素人を脅迫して暗殺させる理由がわからない」

という意見が非常に多いこと。

 

「自分たちで殺せばいいのに」とか

「プロの暗殺者に任せた方が早い」

などといった意見が挙がっているのです。

 

それらの感想は、私には衝撃でした。

たしかに劇中では説明されないものの、

すぐに察しがつくことだったからです。

 

素人に暗殺をやらせるのは、

自分たちを捜査線上に浮上させないための方策です。

 

現実に起こった事件では、

数年前に金正男がマレーシアの空港で

殺害された件なんかを思い浮かべれば、

すぐにぴんと来るはずです。

 

なぜこのような不理解が起こるのかというと、

 

〝犯罪者がもっとも恐れるのは

 自分自身の逮捕である〟

 

という現実が伝わっていないからだと思うのです。

 

たしかに映画や漫画では

その前提を描いていないか軽視している作品が多い。

ルパン3世ゴルゴ13も法に拘束されていませんが、

それは娯楽作品としてのお約束にすぎないのです。

 

たとえば、過去にこういう事件がありました。

オーシャンズ11』をくり返し観ているうちに

自分たちにもできるのではないかと錯覚し、

ほんとうにラスベガスのカジノを襲ってしまった、

というのです。

 

これは露骨にフィクションの影響を受けた例ですが、

ここで私が訴えたいのは、

 〝動機とは別に〟一般レベルの犯罪にも

じつは影響をあたえているのではないか。

 

たとえば振り込め詐欺の掛け子や受け子のバイト募集に、

応募者が集まってしまうという現実があります。

また、あおり運転などもそう。

 

こういった犯罪に

気安く手を染めてしまう例が絶えないのは、

捕まらない主人公を数限りなく見ていることと

決して無関係ではないのではないか?

 

ちなみに先月話題になった

誤送金使い込み事件の場合、

容疑者は使い込んでしまえば返す必要はない、

と考えていたように私には見えました。

 

私は自分で小説を書いていて、

映画やドラマを観るのが好きな人間です。

しかし現実はちがうのだと、

いつも自分に言い聞かせています。

 

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