terra〜物語のガードナー

物語を紡ぎ出すことに人生を費やしているインディーズ作家・多部良蘭沙が、日常で感じたことを綴るブログです。どうぞ、よろしく!

志向と才能

 

 今から7、8年前のこと。

作家の小川洋子さんがトーク番組に出演され、

執筆の実際について話をされていました。

 

「小説家というのはどのように作品の構想を練り、

 物語を作って行くものなのか?」

 

というホストの問いに対して、

・自分の頭で思いつくというよりも

 すでに出来上がったものがあり、

 それを顕微鏡でのぞいているような感じ。

 その物語を見ることができるのは自分しかおらず、

 よって私が書き留めないとこの世から消えてしまう。

 だからそれを書き留めているのだ。

 

・一から十まで

 すべて自分が創作したと思えるものは、

 良い小説にはならない。

 他人が書いたもののような感触がある方が、

 いい作品になる。

 

おこがましいと思われるかもしれませんが、

これら言葉にたいへん共感してしまいました。

私もほとんどまったく同じように物語を構想し、

執筆しているからです。

 

唯一違う点があるとすれば、

私の場合は顕微鏡ではなく

自分にしか見えないスクリーンがあり、

そこに映画のように物語が映し出されている、

という点くらいでしょうか。

 

小川洋子さんは、

これ以外にもいろんな話をされていましたが、

共感できるものばかりだったのです。

 

それを聞いて私はこう確信しました。

 

はっきりと自分は

作家としての〝志向〟を持っている、と。

 

 ここでいう志向は、

才能とは別物です。

 

志向があっても才能が伴わなければ、

よい作品は書けません。

 

しかし重要なのは、

「自分にはこういう志向がある!」と

気づくことだと思うのです。

 

誰しも「私はこれといって才能がない。

だけど、これをやりたいというのはあるなぁ」

と思えるものが、

ひとつやふたつはあるのではないでしょうか。

 

それが何かはひとによって違うでしょう。

ピアノだったり野球だったり、

あるいは料理だったりするかもしれません。

 

しかしそれに真剣に取り組むことは、

そのひとの生きる種になると思うのです。

たとえその先にピアニストやプロ野球選手、

料理シェフになれるという保証がなかったとしても・・・

 

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