terra〜物語のガードナー

物語を紡ぎ出すことに人生を費やしているインディーズ作家・多部良蘭沙が、日常で感じたことを綴るブログです。どうぞ、よろしく!

携帯品は携帯不可の日本

 

 

先日、関西ではこんなニュースが報道されました。

 

「バッグのポケットに十徳ナイフを隠し持っていた」との理由で軽犯罪法違反に問われた鮮魚店店主の裁判が行われた。2審の大阪高等裁判所は「目的なく刃物を所持することは、法律的に妥当とは言えない」として、1審に続いて有罪判決を言い渡した。
店主は「仕事や日常生活で持っていると便利だから」と無罪を主張していた。

この店主の言葉に強く共感しました。

もしかしたら私も、

このような裁判の被告になっていたかもしれないからです。

 

 

今から14年前のちょうど夏。

群馬県で6週間の農作業体験した私は、

帰りに町田(東京)に寄って滞在していました。

 

滞在先から電車で1駅の場所に、

自家製のソーセージを売っている

有名なお店があると知り、

それに目がない私は行ってみることに。

 

 

ところが駅に何人もの警官がいて

〝リュックサックを背負っている男性限定〟

で荷物検査をしていました。

 

「ナイフを持っていませんか?」

 

と聞かれたので、

いつも持ち歩いている

スイスのアーミーナイフを取り出すと、

署で話を聞きたいと言われました。

 

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「なぜこんなものを持っているのですか」

と聞かれたので

「いつも持ち歩いているのです」と回答。

 

一番大きいナイフの刃渡りを測ると

5.5センチ以上*あったので

「これは軽犯罪法違反になる」

と言われました。

 

銃刀法は知っていましたが、

こんな小さな刃物まで

法律の網に引っかかるのだと知ったのは、

このときが初めてです。

 

とても不思議な感じがしました。

このナイフはそもそも携帯用に

作られているからです。

 

キーホルダーとしても使えるように

リングもついています。

 

「携帯品を携帯してはいけない」

とはどういうことか? 

 

そう思っていると、

家はどこかと聞かれました。

 

私は都民ではなく、

旅行中なのだと答え、

 

「ここが目的ではなく、立ち寄っただけです。

群馬県の農家でアルバイトしていたとき、

手伝いに来た夫婦に遊びに来ないか、

と誘われたのです」

 

農家名と滞在先の名前を聞かれたので、

すらすらと答えました。

 

そのあと滞在先を変えて、

今は姉夫婦の元に泊まっていると答え、

その名前と住所も答えました。

 

「今日はこれからどこへ行くつもりですか?」

と聞かれたので、

それも正直に答えました。

 

「では、このナイフはどこで買いましたか?」

「9年前にハイデルベルクで」

 

「……外国ですか?」

「はい。ドイツです。当時、留学していたので」

「いくらしましたか?」

「23マルクだったと思います。当時はユーロ導入前だったので」

すると警官たちは、

またぽかんとしました。

 

しばらくして

今度は年長の警察官が来てふたたび、

「なぜこんなものを持っているのか?」

 

と聞かれたので、同じ答えを返しました。

 

「こんなものを持ち歩く必要はないと思うが」

「持っていると便利に使えるから、常に持ち歩いているのです」

 

そして問題になる5.5センチの刃は

あまり使うことはないと答えました。

 

「使わないなら、持っている必要はないのでは?」

 

「でも、他の機能(ハサミや小さなナイフ)

の出番が多いので。

でも、刃を外すことはできないから、

そのまま使っているのです」

「じゃあ、5.5センチの刃の刃は

使わないわけだな」

 

「あ、この前使いました。

池袋でドイツパンを買ったときに。

固いパンだったので、これで切りましたよ」

 

「それはなんというお店?」

「忘れました。

池袋に行ったのは初めてだったし。

今から一緒に行って、

ここだと案内することはできますよ」

 

そう返すと、また皆が顔を見合わせました。

 

「あのう、それはほんとうの話ですか?」

 

若い警官のひとりが、

不思議そうに聞いてきたので、

もちろんほんとうだと答えました。

 

なぜこれが作り話に思えるのか、

私の感覚からすると不思議なのですが。

 

ちなみに私は嘘をつくことができない性格なので、

警察でなくとも事実通りに話します

(もちろん思い違いなどはあるかもしれませんが)

 

「このようなナイフを

街中で持ち歩くのは軽犯罪法になる。

持ち歩いていいのは、

それが必要になる山の中とか原野のような場所だ」

「つい1週間前まで北軽井沢の農家にいたんです。

その帰りにここへ寄ったのだから、

持っていても不思議ではないのでは?」

 

「でも、ソーセージを買うのに必要はない」

 

「必要云々じゃなくて、

常に持ち歩いているのです。

だいたい出かける際に、

本当に必要なものだけを入れて

持ち歩くなんてことは普通しませんよ」

 

そこで私は、

「お巡りさんの私物のバッグなかにも、

ぜんぜん必要のないものが

入っているんじゃないですか?」

とでも言いたかったのですが、

その言葉は呑み込みました。

 

その代わりにこう言ったのです。

 

「私は刃物を便利な道具として使っているだけで、

これでひとを傷つけようだなんて思いませんよ」

 

すると若い警察官が、こう言いました。

 

「あなたが傷つけなくても、

もしこれを落としてしまって拾った他人が

犯行に使うかもしれないでしょう?」

 

こんな小さな刃でひとを脅せるのでしょうか?

そもそも拾ったもので脅そうとするひとなんて、

ほんの一握りだという気もします。

 

ちなみにこの製品は、

日本でもふつうに売られて、

誰でも簡単に入手できるのです。

 

それに街中では使う理由がないから、

とのことですが、それもわかりません。

 

なぜなら日本は世界でも有数の地震大国です。

いつ、大地震が来てもおかしくありません。

 

たとえば出かけている最中に

とつぜん大地震が来て、

すぐに家に帰れない状態になったら?

 

そういったときにこそ、

この便利アイテムが役に立つのではないか?

 

そう阪神大震災を経験した私は思うわけです。

 

警察官という職業柄、

刃物イコール犯罪に結びつけてしまいがち

なのだろうと思います。

 

しかし一般庶民の私からすると、

発想が凝り固まっているように感じられました。

 

そのあとこのなかでいちばん年配の警察官が、

 

「本来なら勾留することもできるんだぞ」

 

と脅すように言いましたが、

別に拘束されることはなく帰されました。

 

あとで考えると不思議だったのは、

取り調べを受けていたとき

私は何人もの警官に囲まれていたことです。

 

入れ替わりに入ってきた人もいたので、

たぶん10人くらいはいたでしょうか?

 

こんなことに首を突っ込んでくるなんて

「警察って、けっこう暇なんだなぁ!」

と思いました。

 

もちろん平和なのに越したことはありません。

ただ過剰に税金が使われているのではないか?

と心配になりました。

 

*最近調べてみたところ、軽犯罪法接触するのは刃渡り6センチ以上でした

 

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