terra〜物語のガードナー

物語を紡ぎ出すことに人生を費やしているインディーズ作家・多部良蘭沙が、日常で感じたことを綴るブログです。どうぞ、よろしく!

魂だけは売らないで!

 

20年前、名古屋で暮らしていた頃、

私はあるSNSのオフ会に参加しました。

 

食事前の雑談中、プロ野球の話になりました。

とうぜんながら参加者のほとんどはドラゴンズファン。

しかし私は関西出身だからタイガースのファンです。

 

それが原因で険悪なムードになることはなかったのですが、

あるひとりが阪神に対してムカつきをあらわにしました。

よっぽど嫌いなんだなと思っていると、

じつは身内に阪神の選手がいるのだと話し始めました。

 

「その関係で、その選手のサイン入りの色紙が

 何枚か家にあるんです。別にいらないんだけどな・・・」

 

てっきりゆずってくれるものだと思って、

身を乗り出すと、

 

「いや、売りたいんだけど」

 

という返事。

私は思わずカチンときて、

 

「それなら結構です」

 

と返事をしました。

その方はかなり驚いた表情を見せました。

しかし私は、

そこまでファンではないからと退けたのです。

 

 

このあと彼がこの話を蒸し返すことはなく、

私も一切触れませんでした。

が、心のなかでは不思議に思っていました。

 

なぜ、阪神を大嫌いな中日ファンが、

その選手の色紙を後生大事に持っているのでしょう?

そんなもの、

捨てるか燃やすかなどすればいいのではないでしょうか。

 

いえいえ、もちろんわかりますよ。そうしない理由はね。

読者のみなさんもわかるでしょう。

 

でも私が話に乗らなかったほんとうの理由はわかるでしょうか?

 

 

この方は厳密には俗にいう〝転売ヤー〟ではないのだと思います。

が、精神は彼らと同じ。ようするに、お金がすべて

その欲望が、ほんとうに欲しいひとたちを犠牲にしている。

そう思うのです。

 

 

しかしその一方で、そもそも彼らが増えるのは、

買い手がいるからです。

これは特殊詐欺が減らないのと同じで、

根っこは同じだと思っています。

 

なので私自身は、彼らから一切何も買いません。

それが欲しいものだった場合でもきっぱりあきらめるか、

一般販売されているものなら高くてもそこで買います。

 

ですのでネットオークーションも今は利用していません。

転売で使えないものを買わされたことがあって以来、

やめました。

 

というわけで、出品もしていません。

たしかに家にある不要なものを整理できたらとは思うのですが。

しかし、

 

〝なんでもかんでもお金に換えることに

            目を血走らせているひとたち〟

 

のなかに入りたくないのです。

 

 

以前、あるテレビ番組で

巨人ファンを標榜するフリーアナが、

阪神のハッピを着るようにスタッフに命じられました。

 

それに対してアナはこう答えたのです。

 

「芸は売っても魂は売らないよ」

 

とてもいい姿勢だと思いました。

 

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