terra〜物語のガードナー

物語を紡ぎ出すことに人生を費やしているインディーズ作家・多部良蘭沙が、日常で感じたことを綴るブログです。どうぞ、よろしく!

映画館は人と人とを結ぶ

 

 

先日、数ヶ月ぶりにシネコンへ行きました。

「やっぱり外で観るのはいいなぁ!」と実感

正月映画が公開される今は話題作が目白押し

足を運ばれている方も多いと思います。

 

ただそうは言っても、

動画配信の方が便利なのは事実です。

近い将来、

こちらが映画興行の主流になる

と言われているのも納得です。

 

となると映画館の存在意義ってなんだろう?

という疑問に行き着きます。

 

一般的には大きなスクリーンや

高精度な映像に迫力のある音響、

さらには3D上映などが挙げられます。

 

ただ、

それはテレビが普及してから

強調もしくは差別化されるようになった長所で、

本来の特徴ではないと思うのです

(その証拠に画面が小さかったり

 音もふつうだったりする劇場があります)

 

数年前、

私は映画館を舞台にした小説を書きました。

その際、いろいろと調べたのです。

そして、ようやく気づきました。

 

映画館のほんとうの役割は

〝コミュニケーションを生み出すこと〟

ではないか、と。

 

現像したポジフィルムを回しながら

映し出す〝活動写真〟そのものは、

100年以上前にフランス人の手によって

発明されました。

 

しかし、映画館の元になる施設は

それ以前から存在していたのです。

 

それは〝歌劇場〟です。

 

中世の時代、

ヨーロッパの王侯貴族にとって、

外国や他の名家と交流を図ることは重要でした。

 

戦争を避ける、支援を得る、継承権を獲るなど。

そのためには親戚関係になる必要

(速い話が政略結婚ですが)がありました。

王子や王女のためにパーティーを開いたり、

舞踏会に送り出したり、

お互い招きあって狩に出かけたり・・・

などしていたわけですが、

 

そういった〝婚活〟のなかに歌劇場での

オペラ観劇やクラシック鑑賞も含まれていた、

というわけです。

 

映画館って、

今でもデートでよく利用されますよね?

それは、歌劇場だったときの名残みたいなもの

と私は考えています。

 

(ちなみに「ひとと会うのが口実だなんて、

 作品に向き合っているとは言えない」

 と考える映画ファンもいらっしゃると思います。

 しかし名作と言われるオペラやクラシックは

 今でも残っていますよね)

 

例えいっしょに観に行く相手がいなかったとしても、

他人とひとつの楽しみを共有できるのも映画館の特徴。

 

通常の上映でも感じることができますが、

〝声出し上映〟ならより顕著です。

コロナ禍で今は中止になっていますが、

同じように声援を送ることで、

ひととのつながりを実感できる場だと思います。

 

さらに付け加えると、

映画館が生み出すコミュニケーションは

その場に行かずとも預かれます。

 

公開作品はよく話題にのぼりますね。

これは映画興行に〝同時性〟があるからです。

 

限られた今の間だけ上映している作品が、

学校や職場、ネットで話の種になる。

そこから友好関係が生まれる。

これも映画館が果たしている役割のひとつ

ではないでしょうか?

 

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