terra〜物語のガードナー

物語を紡ぎ出すことに人生を費やしているインディーズ作家・多部良蘭沙が、日常で感じたことを綴るブログです。どうぞ、よろしく!

金木犀はトイレの香り?

 

私は毎朝、

プサンスーチョンを目覚めに飲んでいます。

 

耳慣れない名前だと思いますが、

これは中国で生産されている紅茶の一種で、

その多くはイギリスで消費されています。

 

茶葉を松でいぶした燻製紅茶で、

とても素朴なよい香りがします。

これは私にとっては〝餅つきの香り〟

 

子供の頃、

わが家では年末になると

むかしながらの方法で父と母が

正月に食べるための餅をついていました。

 

つく前に餅米を蒸す必要があるのですが、

そのときに窯に松の木をくべていた。

 

それが燃えるときの匂いが、

プサンスーチョンにそっくりなのです。

 

ところが、たいていこの紅茶を試された方は

そんなふうにはおっしゃいません。

 

正露丸のようなニオイがする」

 

という意見が一般的です。

 

調べてみるとたしかにその胃腸薬には

松が燃えたときの成分が含まれているので

よく似たものと受け取られてしまうとのこと。

 

わが家の救急箱には昔から正露丸がなかったので、

その点に気づかなかったのですが。

 

しかし、

素朴な松煙の香りが胃腸薬に例えられてしまうのは、

愛飲者としては違和感を拭えません。

 

それでふと思い出したのはずっと昔、

雑誌に載っていた宮崎駿さんのインタビュー。

 

金木犀の香りから、

トイレの芳香剤を連想してしまうひとが

増えていることを残念がっておられました。

 

私はそれにすごく共感するのです。

 

貧困格差が社会問題化していますが、

それでも中世の時代にくらべたら、

現代人の生活は豊かです。

 

しかしその反面、

人工物に囲まれて暮らすことが

当たり前になってしまった。

人間が自然から遠ざかることは、

はたして幸福なことなのでしょうか?

 

一見、

取るに足らない疑問のように

思われるかもしれません。

 

しかしウイルスや気象災害を持ち出すまでもなく、

自然とのかかわりは人間にとってはとても密接。

けっして小さくはない問題だと思うのです。